南伊豆の子浦(こうら)ってのはな、入り江の奥にひっそり収まった漁村だよ。昔は風待ち・潮待ちの港として、江戸へ通う廻船でにぎわった土地だ。港から少し歩くと、断崖のくぼみに三十三体の観音さまが並ぶ「子浦三十三観音」がある。海の旅の無事を祈った、船乗りたちの信仰の跡だな。
集落の背にあるのが日和山(ひよりやま)。その名のとおり、船乗りが空と海を見て天気を読み、船を出すか決めた山だ。今は「子浦日和山遊歩道」として歩ける。全長1.2キロ、ぐるりと回って1時間半ほど。うばめがしの森を抜けると、入り江と外海がいっぺんに見渡せる場所に出るぞ。
なぜこんな小さな浦に、観音さまや日和山があるのか。答えは「海で食ってきた村だから」だよ。暮らしと祈りが、そのまま地形に刻まれている。映える映えないの話じゃない、土地の記憶を歩く道だ。
遊歩道の入口は落合口と子浦漁港の二か所。伊豆急下田駅から東海バス子浦行きで約50分、終点から徒歩10分だ。子浦海岸の隣に有料駐車場(150台・1日1,000円)がある。足元の悪い断崖もあるから、歩きやすい靴で行きな。